空手界のためにも、自分のためにも優勝したい
空手・組手 植草 歩 AYUMI UEKUSA

小学3年生で空手をはじめてから、わずか2年で全国大会3位入賞。高校3年生で国体優勝し、全日本選手権では組手女子史上初となる4連覇を成し遂げた。世界選手権で2016年に優勝、2018年は準優勝。その実力と明るい性格から、東京2020オリンピック競技大会の追加競技に採択された空手の広告塔としても活躍している。

必ず行う日課は、基本稽古。基礎をおろそかにしない姿勢が大切。

毎日の練習内容を簡単に教えてください。
練習は母校の帝京大学で行っています。午前中にフィジカルトレーニング。夕方から学生たちと一緒に、まずは基本稽古から。帝京大では、基本技を反復する基本稽古を大切にしているので毎日必ず行います。それから組手をやったり、ゴムチューブを腰や手足の先につけて負荷のかかった状態で技を繰り出すチューブトレーニングなども行っていますね。

忍耐強く行った反復練習で、苦手な技を得意技まで昇華させた。

植草選手の代名詞ともなっている中段突きを、どのようにして得意技として身に着けたのですか?
実は空手をやり始めてしばらく経ってからも、中段突きが苦手だったんです。その苦手を克服するために、ひたすら練習した結果、いつの間にか得意技になっていました。その時、反復練習の大切さを実感しました。空手の技の動作には、空手の動きの中でしか培えない要素がある。だから、正しい動作を身に付けるためには、忍耐強く繰り返すしかない。空手の上達に近道はないと思います。

どんな間合いにも対処できるように他競技の要素を取り入れる探求心。

植草選手にとって組手の魅力とは何ですか?
対人競技としての駆け引きに魅力を感じています。相手が何を狙っているのか。それに自分がどう対処するのか。そんな胸の内の読み合いが面白いですね。組手選手は、それぞれ自分の間合いを持っています。当然、試合では自分と間合いの合わない相手とも対戦しなければなりません。大切なのは、どんな間合いの相手にも対処できるようになること。そのために他の対人競技…柔道やテコンドーの道場へ出稽古に行って、対応力の引き出しの数を増やす努力もしています。

相手が技を出す瞬間を見極められるまで映像を繰り返しチェックする。

海外のライバル選手たちへの対策は、どのように行っていますか?
主に映像を見て研究します。移動の電車の中でも、ほとんどライバル選手たちの映像を見ながら過ごしていますね。まず、その選手が失点したシーンを確認して、苦手な技のパターンをあぶり出します。その後も何度も繰り返して見続けていくと、相手のクセを見抜けるようになるんです。私が試合で目指すのは基本的に「先の先」の組手。相手が技を出す瞬間に、自分の技を先に繰り出す。その瞬間を見極めるための準備です。

五目御飯を食べると祖母が近くにいるような気がする。

試合で練習通りの実力を発揮するために、試合当日、または組手の直前などに取り入れているルーティンはありますか?
試合の日は必ず、祖母がよく作ってくれていた“五目御飯”を食べてから会場に向かいます。海外の試合でもレトルトを持参していますね。祖母は私が大学4年の時に亡くなってしまい、全日本選手権と世界選手権で優勝する姿を見せることができませんでした。それが今でも悔しくて…。五目御飯を食べると、祖母が近くにいるような気がする。いつも心で「おばあちゃん、見ててね」と語りかけてから試合に臨んでいます。

実力通りのパフォーマンスを披露するための、道着へのこだわり。

稽古や試合で着用する道着や帯へのこだわりはありますか?
理想は、常にどんな技もスムーズに繰り出せる、自分の身体にフィットした道着。私はフルオーダーメイドで作っていただいています。負けた試合で着用した道着は二度と身に付けません。練習用に格下げしたり、後輩にあげたり。悔しさを忘れないために手元に残す選手もいるそうですが、私はできるだけ早く切り替えようと努めます。

勝ちにいく「気迫」が伝わる、そんな東京2020オリンピックに――。

東京2020オリンピックで、世界の空手ファンに向けてどのようなパフォーマンスをしたいですか? どのようなところに注目してほしいでしょうか?
2019年は、ラグビーを観戦して凄く衝撃を受けました。それまでラグビーにそれほど興味のなかったファンが日本代表のジャージを着て会場に駆けつける。スタジアム中に響いた君が代。勝っても負けても涙するファンの姿。正直、「私もこんな感動を与えられる選手になりたい」と思いました。細かい技術が分からなくても、勝ちにいく気迫は絶対に伝わる。東京2020オリンピック本番では、誰が見てもわかる“熱”を生みたいですね。

東京2020オリンピックで金メダルを獲ることを自分の宿命にしたい。

東京 2020オリンピックで、日本発祥の武道である空手が競技として実施される意義について、どのようにお考えですか?
空手がオリンピックの競技として実施されるのは、もしかしたらこれが最初で最後になる可能性さえある…空手界にとっては、そんな大舞台であると実感しています。個人的には、その大会を28歳という選手として充実したタイミングで迎えられることに運命を感じますし、東京2020オリンピックで金メダルを獲ることを自分の宿命にしたいと思います。

植草選手は以前から、ハッキリと「自分がチャンピオンにふさわしい」「絶対に金メダルを獲る」と仰っていますね。
口に出した言葉には、実現する力が宿っていると考えています。公言することで周囲も自分にチャンピオンにふさわしい言動を求めるし、それが選手、人間として磨かれることにつながる。だから敢えて言葉にしています。空手がオリンピックの競技になるなんて、以前は考えられもしなかった。でもそれが現実となった。すべては私のためだったんだな…と。空手界のためにも、自分のためにも優勝したいと思います。

コーヒーは、リラックスタイムによく飲んでいます。

植草選手のコーヒーライフを教えてください。
銘柄に詳しいわけではありませんが、リラックスタイムによく飲んでいます。たとえば映画を観ながら。飲むとホッとするところがいいですね。スイーツとブラックコーヒーの組み合わせが最近のマイブーム。練習の後に一人でカフェに寄ったりもします。落ち着いた雰囲気の専門店で、静かにコーヒーを楽しむ時間も好きですね。AGF®「煎」は、400以上ものチェックポイントを経て製品になるんですか…まるでオーダーメイド。私の道着と同じですね(笑)。そんなこだわりもアスリートの感性に通じるところがあると思います。